私は日本共産党市議団を代表し、ただいまの病院・老人ホーム対策特別委員長の報告に対し反対の立場から討論を行います。本日開会前に開催された議会運営委員会において、この委員長報告の採択を持って、筑豊労災病院、市立頴田病院、養護老人ホーム愛生苑、及び、しらかわ荘の今後のあり方に関する斉藤市長の方針を市議会として了承することとするとの説明がありました。第1に、特別委員会は調査を目的として設置されたものであり、しかも、その家庭で多くの問題が指摘されていること、第2に、市議会は現在、5万人を超える署名にあらわれた民意によって解散を迫られている、こうしたなかで駆け込み的に議会の了承を図ることは認められないということを、私はまず、指摘しておくものです。
さて、筑豊労災病院、市立頴田病院、愛生苑、及び、しらかわ荘の今後のあり方に関する調査を継続することは当然ですが、この際、10月5日から11月22日まで7回にわたる特別委員会における審査の過程で明らかになった主な問題、今後の方向性についての意見をあわせて述べておきます。
第1は、筑豊労災病院についてです。
1点目は、市立病院でありながら運営を指定管理者制度で民間に丸投げして、医療機能が安定的に維持できるのかという観点です。とくに医業本体の再委任、つまり2次委託について市は、地域医療振興協会との協定で認めないことにすると答弁しました。ところが、当初提出資料にはそもそも禁止規定はなく、委員会の要求資料で初めて明らかになった再委任の禁止規定では、市の承諾があれば医業本体に限らず業務の一部を第3者に委託し、請け負わせることができることになっています。この指摘に対しては、医業本体全部の再委任はないとするばかりであり、将来、救急医療など利益が上がりやすい部門、逆に、じん肺治療など不採算部門の再委任が行われるなど、医療機能の維持が困難になる危険性があります。
また、他市との協定には見られない契約保証人の規定は、「指定取り消しの申し出をする場合において、保証人的な医療機関を設置する」との説明でしたが、撤退を認める条件は明らかではなく、安易な撤退を招きかねません。そもそも契約保証人となる能力のある医療機関は指定管理者候補として公募の対象にするべきではないか、なぜ地域医療振興協会を特別扱いするのかとの疑問も生じます。
2点目は、財政負担をしないで市立病院の運営にほんとうに責任をもてるのかという観点です。
筑豊労災病院を市立病院にするというのであれば、自治体本来の役割として真剣に経営しなければなりません。じん肺治療をはじめ地域が必要とする医療機能は、たとえ不採算部門であっても維持するのが自治体病院の使命であり、適切な財政出動は当然のことです。今回、指定管理者制度を適用することを理由に、市は、財政負担を一切しない、地域医療振興協会が負担するといいますが、結局は、医療サービスと職員の労働条件の低下につながることになりかねません。したがって、市長が市立病院にするというのであれば、国の支援も要求し、財政が厳しいとはいえ、今後、何十億円かかるかわからない鯰田工業団地づくりのムダづかいを削るなどして、財源を確保し、適切な財政出動をおこない、市が責任を持って直営で運営するのが当然です。
3点目は、国に責任を求める立場をつらぬくことの重要性についてです。
先に述べた問題は、後医療検討を優先させてきたことから生まれたものです。この筑豊労災病院の廃止やむなしの立場は、昨年5月20日、当時の飯塚市長と穂波町長が上京して麻生太郎衆議院議員、外務大臣と会い、「筑豊労災病院の廃止は閣議決定でありかわることはない」と確認したことが転換点になりました。委員会で市はなかなか認めようとしませんでしたが、事実は、筑豊労災病院を廃止対象にしたのは、閣議決定ではなく、厚生労働省の決定であることが、日本共産党の追及で明らかになりました。
そもそも、「本来なら国の責任で存続するのがいちばんよい」という立場では、今なお、住民、議会、および行政は基本的に一致しています。とりわけ、じん肺は最高裁が国の責任を認めており、労災病院で責任を持って治療に当たるのが当然です。したがって、筑豊労災病院を廃止対象とすることを決定した厚生労働大臣に対し直接、国がきちんと責任を持つように市長を先頭に要求してたたかえば、展望を切り開くことはできると確信するものです。
第2は、市立頴田病院、愛生苑、及び、しらかわ荘についてです。
この3施設の麻生グループへの民間譲渡は、市においてまともな検討が行われたかという点が問われます。このほど市長が発表した行財政改革大綱には検討のあとがまったくありません。たしかに、公共施設の統合整理等の項目で「民間譲渡」の言葉がありますが、「民間と競合する場合」との条件があり該当しません。質疑で明らかになった経過と日本共産党市議団の独自調査によって、地域医療振興協会に筑豊労災病院とあわせた運営を打診して8月28日断られとありますが、9月4日、斉藤市長と麻生グループ社長とが福岡市内のホテルニューオータニ博多で、自民党総裁選に向けた麻生太郎外務大臣の激励会の後、18時から面談し交渉したのを前後して、わずか3回の交渉で、麻生グループへの譲渡を決めたことが明らかにになっており、まさに、「先に麻生グループありき」というのが現実であります。さらに、頴田住民や患者、および施設入所者への説明、意見聴取がなく、また、医療と福祉の増進、行財政改革の観点から、まともな検討が見られないのは、きわめて大きな疑問であります。
第3は、4施設の今後のあり方に関する調査を深めるために、公聴会の実施が不可欠であるということです。
4施設は、地域医療と高齢者福祉にとっていずれも中核的な役割を果たしており、その存続のあり方は、地域住民のいのちと健康、福祉に重大な影響を及ぼすものです。この立場から26人のうち10人の委員が、住民、患者、地元医療関係者、学識経験者、施設の指定管理者になろうとする法人、及び譲渡を受けようとする法人などから見解を十分に聞くために、公聴会の開催を共同提案しましたが、賛成少数で実現できませんでした。今後、どうしても実現しなければならない課題です。
最後に、特別委員会の運営について指摘しなければなりません。
特別委員会は調査を目的としたものであるにもかかわらず、意見集約の名目で市長の方針を了承するかどうかについて採決をしたのは重大です。意見を整理するというのであれば、委員長がその職責において、調査の到達を文書にまとめていく手法を採用するべきであることを指摘しておきます。
以上で私の討論を終わります。
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